サマーフォーラム2019 プログラム
開催日:7月14日(日)・15日(月、海の日)
開催場所:横浜ワールドポーターズ
<1日目>
9:30 | 受付開始 | |
10:00~10:20 | オリエンテーション | 挨拶とスタッフ紹介、インフォメーション |
10:20~11:10 | 研究報告1 | 「聴覚障害者の自尊感情、自我同一性に環境要因が及ぼす影響-ろう学校と小中高等学校の学校環境の違いに着目して-」
湯浅遼太(会社勤務) ろう学校と小中学校、それぞれの学校環境の違いが、聴覚障害者の自尊感情とアイデンティティに及ぼす影響と、ろう学校ならびに小中学校の通常の学級に通うメリットとデメリットについての記述回答項目を含めた質問紙調査を18歳以上、39歳以下の聴覚に障害がある男女136名に実施した。収集した量的データに対しては統計分析を、質的データに対してはKJ法に準じた質的分析を行った。その結果、多次元自尊感情の構成概念である心理社会的同一性を除く目的変数に、ろう学校固有の環境要因が好ましい影響を及ぼすことが示された。インクルーシブ教育の思潮が高まりつつある昨今において、通常の学級の教育環境で葛藤する聴覚障害児の姿が伺えた。 |
11:10~11:20 | 準備 | |
11:20~12:00 | 研究報告1を受けて | 「学齢期の聴覚障害のある児童の悩みと支援」
柿沼須栄子(元横浜市立通級指導教室教諭) 一般的に、集団が小さく騒音も少なく、聴覚障害への配慮があるろう特別支援学校に対して、集団が大きく騒音が多い通常の学校学級は聞き取りにくさが増す。学校生活では常に集中することが必要とされ、疲労感や疎外感を訴える児童も見られる。学童後期になると他者意識が芽生えてくるが、発達の個人差も大きくなる。自己に対する肯定的な意識を持てず自尊感情が低下しやすくなる場合もある。支援としては、児童への直接的な働きかけだけでなく、環境へのアプローチも含めて障害に対する理解を深めることが求められる。自立に向けて聞こえにくい自分との向き合い方を共に考え、自己肯定感を育てるように指導した事例についてお話ししたい。 |
12:00~13:00 | 昼食 | |
13:00~14:30 | 記念講演 | 「人工聴覚器のシームレス化~執刀医の立場から~」
高橋優宏(国際医療福祉大学医学部准教授) 本邦で人工内耳が保険承認されて25年経過しているが、特にこの10年あまりの変化は目まぐるしい。人工内耳適応の変更、新規機種(植込み型骨導補聴器:BAHA、残存聴力活用型人工内耳:EAS、人工中耳:VSB、軟骨伝導補聴器)の導入により、補聴器および人工聴覚器間の継ぎ目のない医療が可能となり聴覚障害者にとって福音となっている。しかしながらその反面、専門的になりすぎたため耳鼻咽喉科専門医でもそれぞれの特徴を十分に理解できていないのが現状である。本セミナーでは適応検討・決定のプロセスについて症例を提示してお示し、適応決定の考え方、問題点について共有したい。 |
14:30~15:00 | コーヒーブレイク | |
15:00~16:30 | 分科会 | 今回は以下の4つの分科会があります。それぞれの分科会では、リーダーが提案した課題をもとに参加者同士で話し合い、深め、課題の整理をしていきます。
1.乳幼児の聴覚活用 村上たか子(川崎市中央療育センター) 2.軽中等度難聴 鈴木恵子(北里大学) 3.人工内耳装用児の社会性の発達指導 城間将江(国際医療福祉大学) 人工内耳(CI)の早期装用によって音声言語能力は獲得が早く、大方のCI児が小学校就学時には通常学校に就学するようになった。しかしながら、中学校や高校の進学時に、学業不振や友人関係のトラブルなどの理由で聾学校に転入する児も少なからずいる。このようなCI児に遭遇するにつけ、言語聴覚士も養育者も言語発達を目標とした指導に偏っていなかったか、協調性や自主性、責任感などの社会性を習得できるような働きかけを幼少児から行ってきたか自問する。この課題に直面する教員やST間で情報交換し、指導の見直しができれば幸いである。 4.補聴器 中川辰男(横浜国立大学) 補聴器を装用している子どもたちの音の聞こえやことばの聞き取りをどう評価しているかを主なテーマとする。また一般に聴能の評価で困っている点は何かについて意見交換し、望ましい在り方について探っていく。 |
16:30~17:00 | 一旦解散 | |
17:00~19:00 | 懇親会と放談会 | 立食形式の懇親会で交流後、日頃の思いや聴覚活用について意見交換 |
<2日目>
9:00 | 受付 | |
9:30~10:50 | 補聴器アップディト | 「補聴器の周波数低域化の技術とフィッティング」
中川辰男(横浜国大名誉教授)と補聴器メーカの担当者 ほとんどすべての補聴器メーカの補聴器に周波数の低域化の機能が盛り込まれている。その技術は大きく周波数圧縮(frequency compression)と周波数転移(frequency transposition)に分類される。今年度の補聴器アップディトでは障害者支援法の補聴器として、周波数の低域化の機能がある補聴器会社に、自社の周波数の低域化の技術とフィッティング法についてお話ししていただくことを企画した。アナログ補聴器全盛期にイスラエルのAVRがこの機能をもった補聴器を販売していたが、それから30年近くがたち、デジタル補聴器になってどのように進化したのか、また高度から重度の聴覚障害のある子ども達にどのように活用できるかについて考えたい。 |
10:50~11:00 | 準備 | |
11:00~12:30 | 研究報告2 | 「ナラティヴを用いた言語評価」
田中裕美子(大阪芸術大学教授) ナラティヴとは、事実でも空想でも、時間的に連続した出来事を順序付けてことばで表現(再構成)する営みのことである。近年、ナラティヴが言語評価に用いられるようになった背景には、言語の問題が標準化検査だけでは明らかにできないと分かってきたことがあり、言語の実態を反映する発話サンプル分析法として発展してきた。今回は我々が開発しているナラティヴ再生を用いた言語評価法の実際や事例への適用結果を紹介し、マクロ構造(起承転結など)やミクロ構造(言語的特徴)なども解説する、また、言葉の遅れか言語発達障害かの判断に用いることができる、幼児期のナラティヴが就学後の読解力や言語理解を予測するなど、海外での近年の研究知見についても報告する。 |
12:30~13:30 | 昼食 | 補聴器展示 |
13:30~15:10 | 人工内耳関連話題 | 共通テーマ「保護者が人工内耳手術を決断する過程」
1.聴覚障害児の保護者の方から 重度難聴児の母です。息子はA市の療育センターで0歳より指導を受け、現在は地域の小学校の通常級に通う2年生です。新生児スクリーニングでリファーといわれ、難聴と診断されるまでの経過、そしてその後、補聴器を装用しましたが、大太鼓ですら聞えなかった時の気持ち、更に人工内耳の手術を決断するまでの葛藤と経過について、お話をします。私はたまたま、小学1年生から息子が生まれるまでの30年あまりに、何度か聾の方について考えさせられたいくつかのエピソードがあります。それらも織り交ぜながら、決断に至るまでの話を進めていきたいと思います。 2.研究者の立場から 「乳幼児期に人工内耳装用を保護者が決定する過程〜親子関係からの考察」 荒木友希子(金沢大学人間科学系、准教授) ろう学校および通常学校といった教育環境の異なる二組の人工内耳装用児(小学生の男児)、および、彼らの健聴の母親を対象に個別インタビュー調査をおこなった荒木・新井(2016,2017)の研究結果に基づき、人工内耳装用児が自らの人工内耳や障害とどのように向き合っているのか、また、保護者が子どもの障害をどのように捉えて接してきたのか,人工内耳選択にどのような思いを込めたのか報告する。健聴の保護者が先天性聴覚障害児を養育する際に,乳幼児期の人工内耳埋め込み手術がどのような意味を持っているのか考察したい。
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15:10~15:25 | 休憩 | |
15:25~15:45 | 2日間を振り返って | 意見交換とまとめ |
15:45~15:55 | 来年度に向けて |